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2023年01月16日
「仕組み化」は経営者、組織トップ、リーダーの方にとって重要な目標の一つです。仕組み化を実現できるとチームの効率は上がり、さらにはデジタル・トランスフォーメーション(DX)の足掛かりにもなり得ます。ビジネスを大きく伸ばしていく時には、一定の仕組み化は必須と考えて差し支えありません。今回は、そんな仕組み化について、仕組み化を数多く支援してきたからこそ断言できる注意点についてお伝えしようと思います。
事業の仕組み化を検討するときに注意すべきこと
業務の仕組み化は会社を大きく成長させる時に必須となる取り組みです。仕組み化をすれば、業務フローにかかるコストは抑制されながらも成果を伸ばすことも可能です。経営者やリーダーの方は、仕組み化をうまく実行していきビジネスを成功に導きたいことでしょう。
企業での仕組み化とは「一定の再現性のある結果を導く定型化された業務プロセス」を実現することを言います。
では仕組み化の例とはどんなものがあるのでしょうか。見ていきましょう。
仕組み化を実現できている例として、飲食店の調理プロセスがわかりやすいでしょう。マクドナルドなどのハンバーガーレストランを考えてみます。お店でバーガーを注文するとほぼ間違いなく同じクオリティの食事が提供されます。これは間違いなく仕組み化が成功した例です。バーガーを注文したお客が期待するのは、以前に注文した料理を、同じ値段・同じ待ち時間・同じ味で食べられることです。間違っても、3倍待たされることや、味が全く違うものが提供されることは期待していません。一定のアウトプットが重要となります。仕組み化された状態とはこういう事です。
「同じ材料 × 同じ調理手順 = 一定品質のバーガー」となります。これを一般化すると次のようになります。
決められたインプット × 決められたプロセス → 一定のアウトプット
一定のアウトプットを事前に期待している人からすれば、期待通りのアウトプットを得ることが出来れば良いわけです。仕組み化を突き詰めていくと、自動化になります。自動化可能な範囲は全部または一部です。
仕組み化を行うと自動化または半自動化に持っていくことができます。つまり効率化です。経営の効率化は一つの目標になります。コストを減らし、空いたリソースをより価値のある活動に振り分けることが出来るからです。また、先ほどのハンバーガーの例で言えば、一定の研修を積めば、誰でも仕事をすることができます。その業務をできる人が増えるのです。これは採用、人材配置の面から見てもよいことです。
仕組み化に取り組むときに何か注意すべきことはあるのでしょうか?
この疑問に応えるべく、経営目線で解説していきます。経営を端的に「事業を拡大すること」と言い換えてみます。企業の価値を高めることも事業拡大により得られますし、利益を上げることも事業拡大によります。雇用創出という側面も、企業価値が高まっている、とも言えるでしょう。起業した創業者、経営者は事業の拡大を常に意識して会社の舵取りをしているのです。
仕組み化のメリットやデメリットについて考えてみましょう。メリットは既に語った通りです。ではデメリットはどうでしょうか?
実際に仕組み化に取り組むと、次のような症状が出ることがあります。
このような悩みを抱える企業を見ることがあります。全てはある一つの原因から発生している、なんて乱暴なことは言えません。しかし、一定のパターンがあることは事実です。
つまり、人が介在しなくても同じ価値しか生まない業務を、人に任せてしまっている。これは、反復作業によるモチベーションの低下を招いてしまいます。対策として、付加価値のある仕事になるように調整するか、機械の導入によりなるべく人の作業を減らしながら、一人当たりの同じプロセスの割り当て時間を調整します。
インプットとプロセスの調整が不十分なため、アウトプットが一定にならない、またはアウトプットの振れ幅が大きすぎる。ハンバーガーの例で考えると、チーズバーガーを期待しているのに、チーズが無い時がある、お肉が焼け焦げてしまっているなど。これではクレームや問い合わせに繋がり、サポートコストを増加させてしまいます。仕組み化に至る取り組みが不十分な証拠です。
これは一度仕組み化に成功したあとに生じることが多いです。ハンバーガーの調理では、例えば導入したグリル装置の設定やメンテナンスに専門知識が必要であったり、かなり習熟した技術が必要だったりするパターンです。同じグリル装置を使えば一定のアウトプットが保証されていますが、メーカーのサポートが切れてしまったり、グリル装置の設定などに長けた社員の異動や退職などで困る時があります。特に、ビジネスや製品にとって重要な部分であればあるほど、変更する時のコストは一般に高くなります。複雑な機械を導入したとき、かなり複雑な業務を統合した時などが該当します。マニュアルも厚くなっていきます。このパターンでは、一時的にコストが高くなったとしても、それを乗り越えて変更を実現できれば更なる事業拡大が見込める場合には、経営者は決断すべきでしょう。
このアンチパターンは、他の3つとは全く性質が異なります。それでいて、経営者にとっては最もタチの悪いものです。どういうことでしょうか?
インプットとプロセス、そして生成されるアウトプット(ハンバーガー)は期待通りです。しかし、意味のあるアウトプットは周囲に影響を与えます。同じハンバーガーでも、焦げついたハンバーガーを提供してしまうと客離れを招く状況です。つまり、「アウトプット = 焦げついたハンバーガー」で「効果・成果 = 客離れ」です。誰も客離れを起こしたい人はいません。事前に予測できていたら、このアウトプットは提供しない筈です。焦げついたハンバーガーはまともな経営者の監視がある店では、まず客に提供されません。作り直しです。ですが、仕組み化をした後に、現場に任せたり、経営者の解像度が低い場合には、しばしばこのような状況が発生します。自ら競合に参入しやすい抜け道を示しているようなものです。
では、この焦げついたバーガーをアウトプットする仕組み化を実施してしまう理由は何でしょうか?
この問いの答えを知っておくことが、事業拡大の成否を左右します。事業にとってアウトプットの質が致命的ではない場合には、経営者の耳に入ってこないかもしれません。現場で処理されたり、最悪放置されたりしますが、致命的では無いので経営者の首が飛ぶことはありません。致命的な場合には、事業拡大どころか、事業撤退、清算、首が飛ぶなどもあり得ます。
致命的にならないためには何に注意すれば良いのでしょうか?その前に、この間違った仕組み化に陥ってしまう原因からお話しましょう。
悪い成果をもたらす仕組みとは、つまり、アウトプットしか見えていない状況、または、仕組み化そのものが目的化している場合です。アウトプットしか見えていないとは、例えば、オンライン予約サイトでしばしば見る光景ですが、ここでは架空のホテル予約サイトを考えてみます。オンライン検索した人がホームページに辿り着き、部屋・料理・日程・人数を入力すると(インプット)、空きがあれば予約完了となる(アウトプット)ことです。流石に、今からお話するケースは滅多に見られませんが、予約者に予約完了を通知する仕組みが弱すぎると、今では当たり前になっている登録メールへの予約完了報告メールで確定した予約詳細の控えも発行され無ければ、自分が予約した内容をホームページで確認する術もない場合です。アウトプット(予約)はしっかり出力されているので、仕組み化はできました。しかし、宿泊希望者からすると、自分の予約は希望通りに通ったのか、または間違った日付になっていないか、など気になりますが、確認する術がありません。こうなると不満に繋がります。
一方の仕組み化が目的化するとはどういう状況でしょうか。例えば、事業拡大を急ぐあまり、一見うまくいきそうな想定を元に仕組み化をしてしまうケースでしょう。机上では上手くいくことも実践ではミスを連発するのは良くあることですが、このパターンも同じです。経営者やリーダー職の視野が狭かったり解像度が低いと、早すぎるタイミングで仕組み化を狙って大きく着手しまい、結果として期待と真逆にマイナスの影響を出してしまうことがあります。さらには、人が介在することで本来価値を発揮していることも、仕組み化を進めすぎると強みが薄まっていきます。悪いことに、人が介在する価値の真価は、拡大を狙えば狙うほど認識しにくくなっていくので注意が必要です。これを防ぐには、定期的に客観視する、ビジョンを確認する、価値の源泉をイメージすることに対して時間をしっかり使うのが理想です。
仕組み化には適切なタイミングがあります。ベストのタイミングで仕組み化できれば、ビジネスを前進させてくれます。正しい仕組み化には、インプットとプロセスによるアウトプットの設計とアウトカムの計画が必要です。仕組み化を正しく活用して、事業拡大に勢いをつけましょう。
今回の記事では、仕組み化についてアンチパターンを中心に解説しました。
もし現在、事業拡大に向けてプロセスの仕組み化を計画中の場合には、アンチパターンにハマっていないかチェックしたり、期待通りのアウトプットやアウトカムが得られるものかよく考えることをお勧めします。
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